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RV81DS1 - 君は、知識が何であるかを、自分自身に訊ねたことがありますか。
インド、リシ・ヴァレーでの学校討論、第1回
1981年12月10日



0:22 クリシュナムルティ: 君たちは、何について、話をしたいのでしょうか。
0:32 学生: 私はあなたに、質問をしたいと思います。
0:34 K: はい。
0:36 学生: 僕は今、学校に八年以上、います。 僕は、あなたの前の講話の幾つかを、聞いてきました。 あなたは、個人の完全な発達が、 最も重要なことであると、 仰ってきましたが、 そういうことが起きるための理想の雰囲気を、 学校が提供しているとは、僕は思いません。
1:02 ナラヤン: 彼はこう言います - 自分は八年間、ここにいます。 私たちは、人間の完全な発達が、 最も重要なことである、と 言ってきましたが・・・
1:14 K: 学校は、それを提供してこなかった。
1:16 ナラヤン: 学校は、その環境を提供してこなかった。そうですか?
1:19 学生: 理想の雰囲気を、です。
1:22 ナラヤン: ここは、理想の雰囲気を、提供してこなかった、と。
1:28 K: 学校は、 適切な教育を、 人間精神の適切な発達を、 提供してきませんでした。 それが、問いでしょう。 他に質問は?
1:54 学生: あなたは、知識は制限されていると、仰ります。 あなたは、どこに線を引き、これが制限であると、仰りますか。
2:15 ナラヤン: 彼は、知識は制限されている、と言いました。 あなたは、どこに線を引き、これが知識の制限であると、言いますか。
2:27 K: 他に質問は? 学校は、適切な空気、環境を 提供してこなかっただけではなく、 また、各々の人間、君たちの一人一人が、 自分の存在の全体を養成するよう、 助けてきませんでした。 よろしいでしょうか。 他の問いは、こうです - 知識と、 知識からの自由との間で、 どこに線を引きますか。 いいですか?

学生: はい。
3:16 K: 他に質問は?

学生: なぜ僕たちは、言葉に多くの重要性を置きますか。
3:36 ナラヤン: なぜ私たちは、言葉に多くの重要性を置きますか。
3:42 K: なぜ私たちは、言葉に、多くの重要性を与えますか。
3:48 やれまあ! 他に何か?
3:56 学生: しばらくの時間の後で 死なない熱情が、ありますか。
4:04 ナラヤン: しばらくの時間の後で死なない熱情が、ありますか。
4:11 K: 熱情ね。

N: 死なない熱情が、です。 いいですよ。分かりました。 しばしの後で、萎れてしまわない 熱情が、ありますか。 いいですね。 私は今すぐ、それらすべての疑問に、答えるでしょう。 私が、君たちへ質問をしてもいいですか。 君たちはみんな、ここで幸せですか。 多くの声: はい。
4:45 K: ちょっと待って、ちょっと待って。 熱心ですね。 君たちはみんな、ここで幸せですか。 多くの声: はい。
4:54 K: ちょっと待って。私がいう幸せとは、どういう意味かを、言いましょう。 君たちは、鳥を見つめますか。
5:01 多くの声: はい。
5:05 K: 君たちは、すべての樹々を、見つめますか。 植物を、花々を、 あれらの丘を、見つめますか - 世界で最も古い丘、最も古いものの一つである丘を、です。 君たちは、晩に月を見つめますか。 見つめますか。 多くの声: はい。

K: そうでもない! 君たちは、晩の星を見つめますか - 空に他の星がないとき、です。 見ますか。 または君たちは、書物に関心があるだけですか。 その問いに、答えてくれるでしょうか。 君たちは、君たちの先生、教師たちが 差し出す書物に、関心があるだけですか。 または君たちは、この世界すべてを、見つめますか - それは、大変とてつもない世界です。 晩の空の美しさ。 見つめますか。 君たちの一人一人は、それを見つめますか。 または君たちは、自分の書物に、 自分の悩みに、自分の遊びに、 自分の面白いことに、あまりに没頭していますか。 私は質問をしています。 年上の男の子たちは、その質問に答えてくれるでしょうか。 女の子たちは?
7:07 学生: 僕たちのほとんどは、書物に没頭しています。 

K: 何ですか。
7:13 N: 彼は、上級の少年たちの多くは、すでに没頭していると、言います。
7:16 K: ええ。書物にすでに没頭している。 それで、君たちは、これらを無視します。 君はそれを、幸せと呼びますか。 君は、書物に関心を持つだけのとき、 それを幸せだと呼びますか。 君たちは、自分が書物に関心を持つだけのとき、 自分の頭脳に、何が起きるかを、 考慮したことがありますか。 ありますか。 君たちは、書物に印刷されていることに、 関心を持つだけのとき、 自分の頭脳、精神の状態、自分の観察する能力に、 思考を向けたことが、ありますか。 君たちの教師は、君たちへ、鳥たちを見つめるよう、 樹々を見つめるよう、語りませんか。

学生: 私たちは、それらを見つめるんですが、それについて、何もしません。
8:52 一瞬の間、「それは美しい」とか 何かその種のことを、言いますが、 私たちは、それについてそれ以上、何もしません。 私たちは再び、自分たちの書物へ、戻ります。
9:01 N: 私たちは、それらを見つめるかもしれませんが、 私たちは、それについてそれ以上、何もしません。 それから私たちは、自分たちの書物へ戻ります。
9:10 K: で、書物が、とても重要になったのです。

学生: はい。

K: なぜですか。
9:18 学生: 他の道は、ないように思われます -
9:21 僕たちは、試験に通らなくてはいけません。
9:24 K: で、君は、試験に関心を持っているだけです。
9:28 学生: 僕は、職を持たなくてはいけません。 

K: 何?
9:32 僕は、大きくなるとき、就職してなくてはいけません。
9:35 N: 彼は、大きくなるとき、就職しなくてはいけません。
9:42 K: 君は、就職しなくてはいけません。 それで、君は試験に通らなくてはいけません。 君は、君がほしい一つの職を、 どれほど多くの人々が求めているかを、知っていますか。 質問を理解できますか。 私は、この学校から、専門校、大学へ、進みます。 私は、或る種の試験を通ります - 名前の後に、わずかなアルファベットをつけます。 君たちは、どれほど多くの人々が、それを目指しているかを、知っていますか - 一つの職に、です。一万人ほどの人々が、一つの職を目指しています。 いいですか?君は、これに気づいていますか。 そうですか。
10:33 学生: 僕たちは、試験に通らないなら、何をするんでしょうか。
10:37 K: 私は、君が試験に通るべきでないとは、言いませんでした。 私はこう言いました - 君は、それに気づいていますか。 君は、自分が試験に通った後 - 学士、修士、博士、何でも、ですが - その職を求めている人々が、他に多くいることに、 気づいていますか - どの職にも、です。 君は、これに気づいていますか。 気づいていますか。 はい?
11:12 学生: 彼らと競争するために、 試験での成績は、とっても大切です。
11:18 N: 彼らと競争するために、 試験でよくやって、良い成績を取らなくてはいけません。
11:27 K: お嬢さん、私は、違う質問をしています。 私は訊ねています - 君は、気づいていますか。 君が試験に通った後、 君が、一つの職、自分の特定の職、 特定の仕事を探し求めるとき、 その仕事を求める人が、何千もいること、です。 君は、それに気づいていますか。 君は何と言いますか。 はい? 君は、それがどんなに危険であるかを、知っていますか - 君は、自分がほしい職を、得ないかもしれないことが、です。 で、君は、何をしようとしていますか。 君は、ここに生きています。 君は、運がいいなら、専門校(カレッジ)へ、 それからその後、大学へ行きますが、 それから君は、職を探します。 君のおじさん、君のお父さんや、 或る種の遠い親戚が、操って、 君は、運がいいなら、職を得るかもしれませんが、 職を得ないなら、君は、何をするのでしょうか。 ほとんどの人々は、得ないのです。 私が言っていることを、理解できますか。 そのとき君は、何をするのでしょうか。 さあ、どうぞ。 そうね、君たちは十分に考えません。 君たちはただ、何かおぞましい試験に自分が通ることを、考えるだけです。 それから、迷ってしまう。 いいですか? それから君は、何をするのでしょうか。 君が職を得ないのなら、 試験は、何になったのでしょうか。
13:32 学生: 僕たちは、その可能性に向き合わないように、しっかり勉強しないといけません。
13:41 N: 彼は、その可能性を回避するために、自分はしっかり勉強すると、言います。 彼は、同じことを言っています。
13:51 K: で、君は、その可能性を回避するために、しっかり勉強しています。 職を得ない他の人々については、どうですか。
14:02 学生: 彼らにとって、試験は、役に立たないです。
14:07 N: 職を得ないなら、彼らにとって、試験は、役に立たないです。
14:12 K: 君が職を得ないなら、試験は、役に立たないのでしょうか。 彼らにとって、ではなく、君にとって、です。
14:24 学生: そうなるでしょう。なぜなら、僕は、職のために、試験をやっているからです。
14:30 N: 彼は、それは、自分にとっても役立たないだろうと、言います - なぜなら、彼は、職のために、試験をやっているからです。
14:39 K: 神様!これが、あなたたちが作り出している学校です。 君たちは、自分自身に関心を持っているだけでしょう。 いいですか?

学生: はい、先生。
15:01 K: 正直に言ってください。

学生: はい。

K: よし。君は、自分自身に関心を持っているだけです。 君は、職を得るかぎり、 安全でありたいと望みます - 十分なお金、 結婚、子どもと住宅です。 それが、君たちが関心を持っているすべてでしょう。正直に言いなさい。
15:26 学生: 正直に言って、関心はありませんが、それが、起きていることです。
15:30 N: 彼は、正直に言って、関心はないが、 彼の場合、彼は、それらのことに、関心を持っていませんが、 それが、一般的に起きてきたことです。
15:39 K: で、君は、何に関心がありますか。
15:45 学生: 世の中には、とても多くの悲惨が、あります。
15:53 K: で、君は、悲惨に関心があるんでしょうか。 君は、それについて、何をしようとしていますか。
16:01 学生: ちょうど今、僕はこれについて、とっても混乱しています。 僕は、自分がそれについて、何かをできるのかどうかを、知りません。
16:08 K: 私は、自分が君たちの英語を理解できたらなあと、思います。
16:11 N: 彼は、自分はそれについて、混乱していると、言います。 彼は、この世の中の悲惨について、自分が何をできるのか、確かではありません。
16:18 K: 君たちはどこで、世の中の悲惨を、理解しはじめますか。 外側のあちらの世界は、君より異なっていますか。
16:34 学生: 僕は、自分自身から始めなくてはいけないと、思います。

学生: 外側で起きつつあることについて、 何かをしたいのなら、 自分自身について、何かをしなくてはいけないと、僕は思います。
16:53 K: 君は、自分自身から始めますか。 または、それらは言葉だけですか。
17:00 学生: それは、もっと多くの言葉だと、思います。
17:14 K: 言葉だけ?

N: もっと多くの言葉です。
17:19 または、言葉以上、という意味ですか。

学生: もっと多くの言葉です。
17:24 K: で、君は、自分がすでに知っている言葉に、もっと多くの言葉を、加えます。 これは、どんな種類の学校ですか。 私に言ってくれるでしょうか。
17:40 学生: それは、他のどの学校とも似ているし、それから・・・
17:44 K: それは、他のどの学校とも似ている。他に何ですか。
17:49 学生: ここは、美しい谷に位置しています。
18:09 学生: あなたは、変化について、多く語られますが、 ここで実際に、物事は、大いに表面的な水準にあります。

K: 私は、始まりに君たちに、質問をしました。
18:25 君たちは、ここで幸せですか。 なぜなら、君たちがとても若い間に、幸せであることは、とても重要であるからです。 そうではないですか。
18:43 学生: それは、何を幸せと呼ぶかに、依存しますね。
18:47 K: 私は説明しましたよ。 君は何を、幸せと呼びますか。
18:56 学生: 私にとって、それは自分に来たんです - ただ過ぎゆく何か、です。

K: 分かりません。
19:06 N: 彼は、自分にとって幸せは、過ぎゆく何かだと、言います。
19:11 K: ええ。 で、君は幸せですか。 やれまあ! 私はまた、お訊きしました -よければ、ですが、 君たちは私に、何について話をしてほしいのでしょうか。 君たちは、三つの質問をしました - 知識は、どんな所を占めるのか、 そして、知識と自由との間の分割、などです。 いいですか。 君たちは私に、何について話をしてほしいのでしょうか。 君たちは、何に興味がありますか。 書物ですか。 試験ですか。 それがすべて、君たちが興味を持っていることですか。 どうぞ、私に言ってくださるでしょうか。

学生: 僕は、自分が何に、興味を持っているかを、知りません。
20:39 なぜなら、時々、僕は何かに、例えば、学習に興味を持ち、 それから、しばらくした後、僕は、自分は学習したくないと感じると見るからです。 で、僕は、自分が何に、興味を持っているかを、実際に知りません。
20:53 K: 君は、どのように見出すのでしょうか。 君は、誰かが言ってくれるのを、待っていますか。
21:05 学生: 僕は、誰かが言ってくれるのを、待っていません。
21:07 K: ゆえに、君は、自分が本当に、何に、深い興味を持っているかを、 どのように、見出すのでしょうか。
21:20 N: 彼はまた、質問をしました - 死んでしまわない熱情は、ありますか。
21:28 K: 君は何を、熱情と呼びますか。 君にとって、熱情は何ですか。 絵を描きたいとの熱情ですか。 一流の大工になりたい、 一流の科学者になりたいとの熱情ですか。 君は科学者であると言ってくれる、 何か小さな試験に、通るだけではなく、 その裏に、熱情を持つ - 活力、エネルギー、やる気を、です。 君は、何かに熱情を持っていますか。 きわめていい衣服を着たいとか、 一番本当に宗教的な人でありたいとの熱情ですか。 君は、何か熱情を持っていますか。 やれまあ! 君はまた、知識における分割についても、 質問をしました。 知識とは何ですか。 君は自分自身に、訊ねたことがありますか - 知識とは何ですか。 誰かが、その問いを出しました。 知識とは何ですか。 書物から学ぶだけではなく、 また見守ること。 木の葉の動きを見守る、 丘を見守る、 樹々が成長するのを、 鳥たちがどう飛ぶのかを、見守る。 書物から学ぶことによってではなく、見守ることによって、です。 で、知識とは何ですか。 私は、君たちがそれについて、私と議論してくれるだろうことを、 願っています。してくれますか。 君にとって、知識とは何ですか。

学生: 先生、知識は、僕たちの経験です。
24:27 N: 知識は,私たちの経験です。

K: いいですよ。
24:31 知識は、経験から来ます。
24:36 そうですか。
24:38 学生: はい。

K: そうです。 さて、経験とは何ですか。 君は、車で運転します。 かなり速く、です。 君は、事故を起こします。 君がそうならないことを、願っていますが、人々は起こします。 それは、経験なのでしょう。 そうです。 君は、病気になって、病院へ行くとき、経験をします。ですね? 雷雨があるとき、 君は経験をします。ですね? 君は、何か新しいことを学ぶとき、経験をします。ですね? 君は、何か前に感じたことがないものを、 見たり、感じたりするとき、経験をします。ですね? で、これらすべては、様々な形の経験です。 君は、それらの経験から、何を学びますか。 事故を回避するためですか。 いいですか? 木の葉に照る光を観察し、それを、よく気をつけて見守る。 で、それらは、 それらすべての経験は、知識と呼ばれる記録を、 残します。ですね? 君は、それに同意するのでしょうか。

学生: はい。

K: 君たちみんなが、それに同意しますか。
26:31 学生: はい。

K: いいです。
26:33 そのとき、何が起きますか。 君は、事故の知識を持ちます。 君は、自分が病気であったところの病院の知識を、持ちます。 君は、何か全然新しいものを見る知識を、持ちます。 で、その知識の後、何が起きますか。 君は、数学を学んできたか、教えられてきました。 君は、書物から学んできました。 君は、見守ってきました。 君は、自分の教師に聞いてきました。 君は、情報を集めてきました。 ですね? それは、知識と呼ばれます。 その知識は、頭脳に蓄えられているでしょう。 ですね?同意ですか。 その後、何が起きますか。
27:44 学生: 僕たちは、その知識を使います。 それを応用します。
27:49 K: 君は、どのように、その知識を応用しますか。 私は学んできました。 私は、大工の見習いを、してきました- 大工の親方の、です。 彼は私に、どう道具を使うのか、 木の性質を感じるのかなどを、 教えてくれました。 二、三年の間、私は、学習してきました。 私は、学んできました。 その学びは、知識になります。 私は、その知識を使おうとしています。ですね? ですね? さて、知識との間、行為の前に、何が起きますか。 私とともに、考えてください。 私から学んでください。 ただ答えないで、学んでください。 私は見てきました - 経験です。 私は、経験から、知識があることが、分かりますが、 その知識が行為に移される前に、 何が起きますか。
29:16 学生: 思考が作動します。 思考が・・・
29:21 N: 彼は、思考が作動する、と言います。
29:23 K: 思考が作動します。そうです。 付いてきて、何が起きるかを、見てください。 経験、知識、思考と行為。 ですね?それは捉えましたか。 私は経験をします。 その経験から私は、大変多くの知識を、集めます。 そのとき私は、その知識をどう行為に移すのかを、考えます。 で、経験、知識、記憶、 そのとき思考、そのとき行為です。 その行為から、君は、もっと多くを学びます。 ですね? そのすべてが、知識、 思考、行為の過程です。 それは明らかですか。 君は、学校で学んできたなら、ですが、 工学について、大変多くの情報を、知識として、学んできました。 君は、専門校(カレッジ)へ進みます。そこで君は、 工学、数学、圧力などについて、もっと多くを学びます。 それから、君は、大学へ進みます。 そこでも君はまた、もっともっと多くの知識を、得ています。 それから君は、就職します - 君は運がいいなら、です。 そのとき君は、自分が取得してきた知識に沿って、 上手にか、下手にか作動します。ですね? それは明らかですか。 それは理解しましたか。 さて、ちょっと待ってください。 私は、頭脳の中で実際に進んでいることを、 説明してきました。 言葉に表してきました。 さて君は、自分自身でそれが、見えますか - それの事実が、です。 または君は、それを観念にしたのですか。 理解しますか。

学生: 僕は、理解しませんでした。
32:01 K: ええ、君は理解しない。 いいですよ。 まず第一に、 君は、言葉と物との間の違いが、見えますか。 マイクロフォンという言葉は、そのマイクロフォンではない。 君は、それを理解しましたか。 いえ、いえ。 君がこれを、完全に理解しないのなら、「はい」と言わないでください。 言葉は、そのものではありません。
32:45 学生: 僕たちが、何かについて見る特性は、 それなるものではない、と仰るんですか。 僕たちが見る特性は、そのものなるものではないのですか。

K: 君は、こちらへ来なさい。
33:01 N: 彼は、見られる物質の特性は、 そのものではないと、言っています。
33:16 K: 来て、座ってください。
33:21 学生: 僕たちが見る特性は・・・
33:25 K: 私には、単純にしてください。 僕たちが見る特性、ではない。 見るというのは、どういう意味ですか。 君は、あの時計を見ます。君は、あの柱を見ます。君は、あの樹を見ますね。 進んでください。 「時計」という言葉は、実際のものではありません。
33:48 学生: でも、僕たちが言っている・・・
33:50 K: 君は、私が言ったことを、理解しましたか。

学生: それはそのものではないと、どうして言えますか。
34:00 K: どうして言えるのか、ではない。 「時計」という言葉、clockは、
34:05 実際の時計、そのものではない。 言葉は、そのものではない。 君のお父さん - 「お父さん」という言葉は実際に、君のお父さんではない。
34:28 学生: はい。その言葉は、それが何なのかの映像を、創り出すだけです。
34:32 K: 初めに、言葉はそのものではないのを、見てください。
34:40 学生: それは、そのものと、ほとんど同義語です。 言葉と物ですが、それには、とても微妙な違いが、あります。
34:50 K: ですが、初めに見てください。 それは、総合なのかもしれない。 それは、これなのかもしれないが、 違いを、見てください - 私たちの精神がどう働くのかを、です。 言葉、例えば「時計」 - 君は即時に、それを想像します。 ですね? 私たちは、言葉を、物より分離しません。 ですね?
35:19 学生: で、先生、僕たちは、いつも、これに捕らわれています。
35:21 K: 君の名は、何ですか。
35:23 学生: サパンです。
35:25 K: サパンね。いいよ。 「サパン」という言葉は、君ではない。
35:30 学生: そうです。
35:33 K: それは君を指示しますし、 それは君を叙述しますが、 叙述は君ではない。 私は、山を叙述します。 私は、山を絵に描きます。 私は山について、詩を書きます。 ですが、詩、叙述、絵画は、 実際の山ではない。 分かりましたか。

学生: はい。
35:59 K: 確かですか。

学生: はい、先生。
36:02 K: 本当かな。
36:04 学生: そのとき、問いが生じます - 山は何ですか。僕は何ですか。
36:10 K: 私は、君が何なのかを訊ねていません。

学生: でも、僕は、訊ねています。
36:13 K: 君は、間抜けかもしれません! ですが、私は君に、とても単純な質問を、しています。 「山」という言葉は、実際の岩、樹、それらではない。ですね? それに同意しますか。

学生: はい。僕はそれに同意します。
36:36 K: よし。うれしいです。 で、次は、こうです - 君が経験をとおして 取得してきた知識 - 知識、記憶、思考、 そのすべては、君の一部なのでしょう。 ですね?ですね?

学生: はい。

K: さて、質問がされました -
37:09 知識と非知識との間には、自由か、分割が、ありますか。 これは、なかなか困難です。 さて、君たちは、書物から、大変多くの知識を、取得してきました。ですね? 他の人々が言ってきたことを、です。

学生: はい。

K: 同意ですか。 君は、それを余生の間、反復しますね。 もう少し多くか、もう少し少なくか、得ますが、 君は、それを反復しつづけます。ですね? で、君に、君の頭脳に、何が起きますか。
38:05 学生: それは、自分のではありません。
38:08 K: それは、どういう意味ですか。
38:11 学生: 僕は、自分自身で考えていません。
38:14 K: 進んで、探究してください。 それは、どういう意味ですか。 君たちはみんな、受け売りの人間である、ということです。 いいですか?いいですか? 彼は、それを言うのが、好きではない。 

学生: ええ。

K: 彼は、自分が受け売りの人間であることを、認めたくないんです。
38:34 学生: ですが、もしも僕たちが、知識を発見しはじめることになったなら、 確実に、長期間が掛かるでしょう。

K: 何ですか。
38:41 N: もしも、彼が、自分に与えられる知識すべてを 発見しなくてはいけなかったなら、長期間が掛かるでしょう。 彼自身が、知識すべてを、拾い集めなくてはいけないなら・・・
38:53 K: もちろん、そうでない。

学生: ・・・長期間が、掛かるでしょう。
38:56 K: たぶん君は、千年が掛かるでしょう。 ですが、その点を、見てください - 私たちは、他の人たちから何かについて、学んでいるかぎり、 例えば、ですね、 君は、科学者になりたいのなら、 以前の科学者たちと彼らの発見すべてを、学習しなくてはいけません。 この知識すべては、書物に蓄えられています。 君の学習により、それはそこに、君の精神にある。 君は、まさに始まりから、 科学は何であるかを、発見しはじめられません。 他の人々が、それを発見してきました。 で、君は、それについて学びます。 君は、他の人々が言ってきたことを、反復します。 ですね? ですね? 君たちは、それらに同意しますか。 しますか?恥ずかしがらないでください。 お兄さんたち、それが、君たちがやっていることです。
40:04 学生: 先生、そうすることのどこが、いけませんか。
40:11 K: ああ。そうすることのどこが、いけませんか。 君は、機械に似ているでしょう - 他の人々が言ってきたことを、反復し、反復しつづけるなら、そうでしょう。 それは、ぐるぐる回りつづける機械に、似ています。
40:29 学生: 僕は確かに、自分は機械であるとの感じを、持っていません。
40:32 K: もちろん持っていません。 君は、自分が機械であるとの感じを、持っていませんが、 君はそうなのです。 君は、自分が機械であると考えたくないんです。 たぶん、君は学習しています・・・ 私は、君たちが何を学習しているのかを、知りません。 仮に、君は数学を学習している、とします。 それが、 君が試験を通ろうとしている学科です。 そして、君は、どこか不幸な大学で、 数学の教授になります。 そして、何が起きますか。 君は、自分が学んできたことを、反復します。ですね? そして君は、他の学生たちに、彼らが学んできたことを反復するよう、言います。 それで、次第に、君の精神、君の頭脳は、 機械的になります - 機械が、ぐるぐるぐるぐる回っているように、です。 君は、ぐるぐる回る中で、何かを発見するかもしれませんが、 それは、やはりぐるぐる回ることです。 同意しますか。

学生: はい、先生。
41:47 K: すっかり確かですか。
41:50 学生: もしも、僕が、数学の教授になるとしたなら、 二十四時間ずっと、僕はただ、数学を教えていないでしょう。 私ができるだろうことは、他に多くあります。
42:00 N: 彼は、自分が数学の教授になるとき、 二十四時間ずっと、数学をやっていないだろうと、言います。
42:07 K: ええ、もちろん、そうでない。
42:09 N: 彼は、他の興味深いことをもまた、やっているでしょう。
42:11 K: 君は、他の興味深いことを、やっているでしょうか。 それは、君が数学に興味を持っていない、という意味です。 で、君は、自分が人生で何をしているかを、悟りますか。 それは、君の生です - 学校、専門校、大学。 幾つかの試験に通り、 自分の名前の後に、(称号の)幾つかアルファベットを付け加える。 そして、余生の間、君は、こうします。
43:03 学生: それに、代替案はありますか。 

K: 何?
43:07 N: 彼は、代替案は何なのかと、言います。
43:09 K: 君は、見出したいですか。 君は、それについて、学びたいですか。 どうですか。真剣に、です。 君は、数学を学習するためとか、自分の学習に掛けてきたほどの 時間を、掛けるでしょうか。 または、それは、過ぎ去る興味だけですか。 君は、代替案がほしいと思います。 私は、代替案が何であるかを、君に語りましょう。 ですが、君はそれに、時間を、掛けなければならないでしょう。 いいですか?掛けるでしょうか。 で、それが大事でないから、 君は、代替案が何であるかを、訊ねているだけです。 大事なことは、試験、称号、職です。
44:13 学生: でも、先生、たとえその代替案が・・・ 自分は、またもや、同じことをしようとしています。 ひとたび、代替案がほしいと言うとき、 自分は、やはり、知識の分野にいます。
44:28 K: そのとおりです。 全くそうです。 知識の分野です。 で、君は、一つの知識から別のへ移ります。 知識は同じです。 で、君は、生をどう生きるかを、見出したいですか - どこで知識が必要であるのか、 どこで知識が必要でないのかを、です。 君が大工であるなら、知識は必要です。 君が車を運転したいなら、知識は必要です。 君が、ビジネスマンや技術者や、 何かいかさま師になりたいなら、知識は必要です。いいですか? 知識は、そこでは、すべて必要です。 さて、見出してください。 どこで知識が必要でないか、 または、必要でないかもしれないのかを、見出してください。 見出してください。 見出すよう、君の頭脳を行使してください。 質問を理解できますか。

学生: はい、先生。
45:38 K: 私は生涯すべて、この分野の中で、働いてきました。 私は、一つの片隅から、別へ行きます。 私は、自分は自由であると、考えますが、 それはやはり、同じ分野にあります。ですね? さて、私はそれを悟ります。 それは、自由ではありません。 それは、縄に繋がれたロバに、似ています。 それは、自分がきわめて自由であると、考えます。 なぜなら、それは、その長さのロープを、持っているからですが、 それは自由ではありません。ですね? で、私は、初めに自由があるのかどうかを、訊ねなくてはいけません。 それは、これからの自由、という意味です。 ですね?

学生: はい、先生。
46:18 K: さて、君はどのように、見出すのでしょうか。
46:22 学生: でも、それからの自由は、ありません。 最初の重要性は、学校に通ること、 就職することと、生で安全に感じることです。 

K: 何て言っている?
46:34 N: 彼は、こう言います - 最初のことは、 試験に通ること、就職することと、安全に感じることです。 これからの自由は、どこにありますか。
46:46 K: それが、私が訊ねていることです。 これからの自由は、ない。 君がそれをほしがるかぎり、それからの自由は、ないのです。 理解できますか。 私が職をほしがり、 良い職、お金、住宅、家族をほしがるかぎり、 私は、そこに填まり込んでいます。 私は、自由がほしいなら、探究しなくてはいけません。ですね? 私は言わなくてはいけません - 自由とは何ですか、何からですか、と。
47:18 学生: 自分は、何からの自由がほしいのかを、 探究しなくてはいけません。
47:26 K: そのとおりです。初めに、何かからの自由です。ですね? さて、私は暴力的です。 私は、暴力から自由になりたいと思います。 それが一つです。 私は、痛みから自由になりたい、 私は、世論から、自由になりたいと思います。 それを、君たちの誰一人として、ほしがりません。ですね? よろしいですか? 世論は、君にとって、きわめて大事でしょう。 何ですか。 同意しますか。 ですが、君は、それより自由になりたいと思わないでしょう。 君は、人々が君について 何を言いかねないかと、怯えています。 君たちは、バーナード・ショウについて、聞いたことがありますか。 (イギリスの)作家です。 彼は死んでいます。 彼は、自分の(暖炉の)マントルピースの上に掲げていました。 「人々は言う。 彼らには言わせておけ」と。 理解できますか。 理解しましたか。

学生: はい、先生。
48:58 学生: でも、それはまたもや、人々が言っていることからの逃避です。

K: いえ、いえ。そうね、人々は、あらゆる種類のことを、言いますよ。
49:13 いいですよ。人々は、私について、あらゆる種類のことを、言います。 誰が気にしますか。 彼らは、良いことを、言うかもしれません。 悪いことを、言うかもしれません。 彼らは、君を傷つけることを、言いたいのかもしれません。 彼らには、言いたいことを、言わせておこう。誰が気にしますか! ですが、君たちみんなは、気にします。
49:35 学生: はい。

K: なぜですか。
49:38 学生: なぜなら、僕たちが自分自身で、かたどってきた世界 - これが、最初に重要であるからです。
49:55 N: 彼は、こう言います - 彼が自分自身で、かたどってきた世界ですが、 職と安全は別として、 世論もまた重要な要因です。

K: もちろんです!
50:06 で、君は、世論に怯えていますか。 もちろん怯えています。君たちはそれについて、知ってすらいません。

学生: 先生、死後に生はありますか。
50:23 K: ああ、神様!
50:40 なぜ私たちは、みんな笑っていますか。 なぜなら、小さな男の子が、死の後に何が起きるかを、訊ねるからです。 私たちは、別の時にそれについて、話すでしょうが、 今、私たちは、死の後ではなく、 死の前に何が起きるかについて、話しています。

学生: 或る人々は、死にかけていたとき、病院へ行ったんですが、
51:19 彼らは、長いトンネルを見たと、言いました。 彼らは、通って行って、トンネルの向こうの端で、 友だちが叫んでいるのを、見たと、言いました。 

K: 何ですか。
51:30 N: 彼は、こう言います - 死にかけていて、 死から救助された人々は、 戻ってきたとき、自分たちはトンネルを通り抜けたと、言います - 向こうの端で彼らは、友だちが自分たちへ叫んでいるのを、見た、と。
51:55 K: いいかな。今、死について話さないでください。 私たちは別の時に、話すでしょう。 私たちが死ぬ前に、何が起きるかについて、話しましょう。 いいですか。 君は、自分自身を見つめたことが、ありますか - 鏡は別として、です。 私は、それを言っていません。 君は、自分自身を見つめたことが、ありますか。ありますか。
52:36 学生: はい。でも、いつの時も僕は、自分自身について、 イメージを形成してきました - 僕はこれである、僕はあれである、と。 それでは、僕はどこに行き着きません。
52:50 K: 同意です。 さて、なぜ君は、自分自身について、イメージを持ちますか。 私が訊ねたことを、聞いてください- 私の問いを、です。 君は、何のイメージもなく自分自身を、見つめられますか。 または、イメージの作り手である自分自身を、見つめられますか。 または、君は、自らが自分自身について作ってきたイメージを、見つめられますか。 これは、私たちみんなに、適合します。 君は、自分自身を見つめられますか - すなわち、君のイメージを、です。 それを見つめてください。 君は、自らが自分自身について作ってきたイメージを、見つめられますか。
53:55 学生: それは自分に、あまりに強く埋め込まれてしまいました。
54:02 N: イメージは彼に、強く埋め込まれてしまっています。
54:09 K: で、君は、そのイメージでしょう。 ですね?よろしいですか? 君は、それに同意しますか。 静寂! 君は、自分のイメージは 強く埋め込まれているとの発言を、します。 私は、その強く埋め込まれたイメージを、見つめなさい、と言います。 見つめられますか。 私は、君たちが自分自身で物事を考えぬくことに、 慣れていないのが、分かります。ですね?
55:03 学生: あらゆる物事が、空白になるようです。 

K: 分かります。
55:08 なぜですか。 君は何歳ですか。

学生: 十五です。
55:24 K: 十五歳に、留まりなさい - すてきなままに。 年老いてはいけません。 私たちは一時間、話してきました。 それで十分ですか。 それで十分ですか。

K: はい。 その男の子は、「はい」と言います。 それで十分ですか。 君は、何と言いますか。
56:14 学生: 僕は、あなたが唯一つの疑問にも答えたとは、思いません。
56:20 N: 彼は、あなたは、唯一つの疑問にも答えなかった、と言います。
56:24 K: もちろんです。 私は、唯一つの疑問にも答えなかったと、あの男の子は、言います。 なぜですか。 私は、逃避していません。 私は、回避していません。 私は、君たちの疑問すべてに、答えられますが、 私は、それらに答えてきませんでした。 なぜなら、私は君たちに、自分自身でそれを、考えぬいてほしいからです。 私は、君たちがそれを考えぬくのを、助けられますが、 でも、そうね、君たちは、慣れています - 君たちは質問をし、誰かが、それに答えます。 それで、君たちは、自分自身に問うのを止めてしまったのです。 ですね? ところが、私がこう言うなら - ごらん。君は、 熱情のような、知識のような質問をしてきました。 それを探究し、それを覗いて見てください。 それを理解するよう、自分の精神を、行使してください。 私が言うことではなく、見出しなさい。 そのように君は、良い頭脳を持つのです。 ですが、私が、「まあ、熱情はこれです」とか、 「知識の目的は」などと言うなら、 私がそのすべてを、よく気をつけて説明するなら - 私はそうするでしょう。 私は、説明に怯えていませんが、 その終わりに、君は何をするのでしょうか。 君は、その説明を反復するでしょう。ですね? ところが、もし君と私が一緒に考えられ、 一緒に探検でき、見出し、学べるなら、ですが、 君たちは、そうしていません。 君たちの精神、君たちの頭脳は、言ってもらうことに、慣れています - 何をするのか、どう考えるのか、と。 ですが、私はそうしたくありません。 私たちができるなら、ですが、 私は、物事について新たに、新鮮に、見出すよう、 学ぶよう、互いに助け合いたいのです。 それで、一時間で、十分ですか、ナラヤン。 それで十分ですか。

学生: 先生、僕たちは継続できます。
59:09 K: 気の毒に。
59:10 彼は、継続できます、とおとなしい声で言います。 私は、今朝はそれで十分であると、思います。 君たちは、二、三分の間、静かに座るでしょうか。 絶対的に静かです。 眼を閉じておいてください。 身体を動かしたり、指をひねったりしないでください。 ただ、絶対的に静かに座ってください。 よろしいです。