OJ82CNM2 - 心理的苦痛

第2部 ボーム博士、ヒドレー博士、シェルドレイク博士との対話
カリフォルニア州オーハイ
1982年4月17日
テキストのみのバージョン
|
0:05
【 心の本質 】
|
|
0:13
~ 第2部 ~
|
|
0:15
~ 心理的苦痛 ~
|
|
0:23
これはJ.クリシュナムルティと―
その他の人々による一連の対話です
これらの議論の目的は
心についての探求です
心理的無秩序とは何か
心の変容に必要なものとは何か
|
|
0:43
クリシュナムルティ氏は 宗教哲学者として
この問題に 長年携わってきました
米国、英国、インドでは
小中学校を設立しました
|
|
0:57
デイビッド・ボーム氏は倫理物理学者
英国のロンドン大学の教授です
倫理物理学などに関する本を
多数執筆しています
2人は以前―
様々な対話を行いました
|
|
1:14
ルパート・シェルドレイク氏は生物学者
彼は最近『形態形成場』という仮説を
本の中で提示しました
現在 インドの国際作物研究所に―
植物生理学者の意見を
求めています
|
|
1:32
ジョン・ヒドレー氏は精神科医
クリシュナムルティ学校に
過去6年間携わってきました
|
|
1:41
第1部では『自我の本質』を取り上げ
苦痛、社会、宗教との関係を議論しました
果たして我々は これらの関係を―
突き止められるか?
安全を欲する心理が 問題の原因なのか?
引き続きこれらを議論します
|
|
2:04
昨日は 心理的無秩序の―
原因と性質の話をしました
自己中心的な活動の中に 心理的無秩序の起源があり―
それが分裂と葛藤を生み
攻撃性、支配欲といった生物学的要因や
病、死、すべてが 原因の一つとなっています
今朝は手始めに
ディビッドから意見を聞きます
このような生物学的要因と 心理的な安心感の関係について
|
|
2:43
はい では生物学的に… 例えば 動物は―
恐怖、怒り、攻撃性などがすべてで
それらは非常に単調で
短い時間しか存続せず―
ほとんど痕跡を残さず消え去ります
高等動物には多少記憶が
あるかもしれませんが
人にとって記憶は非常に重要で
経験から未来を予想したりします
振る舞いも異なります
3:19
例えば 動物なら 他の動物と諍いを起こしても―
その後しばらくして
平衡状態を取り戻します
しかし 人間が二手に分かれて
けんかをした場合
それは何百年も続き
何が起きているのか
覚えておくのも大変です
それが最大の違いでしょうか
|
|
3:48
記憶が…
|
|
3:50
ええ 記憶の影響力です
でも記憶自体は問題を起こしません
単なる事実ですから
けど 記憶には影響力があり 恐怖を生み出したり
怒りなどの混乱を 引き起こすかもしれない
過去の記憶と未来の予測によって
|
|
4:13
‐考えることによって? ‐ええ 記憶を元にね
|
|
4:16
動物も攻撃された経験があれば
|
|
4:18
怖がるでしょうが―
再び遭遇しない限り 考えないでしょう
|
|
4:28
ええ 大抵の動物は―
他の動物のイメージを
作れないと思います 以前 犬が―
激しく喧嘩してるのを見ましたが
終わった途端 忘れてるんです
動揺してるが 理由はわかってない
もし覚えているなら―
いつまでも葛藤するはずです
つまり 動物が葛藤する時間は―
限られています
しかし人間は違い
いつまでも覚えていて
考えることによって 引き伸ばそうとします
|
|
5:13
つまり 動物界に見られる苦痛と
人の苦痛が違うのは
人があれこれ考え
気に病むからだと
そう言っているのですか?
|
|
5:27
ええ 例えば動物にも
伴侶を亡くしたシカが 恋焦がれて
死んだ話がありますが 限度があると思います
動物も苦しみますが
人間は無制限に引き伸ばします
つまり 人間の場合―
途方もない爆発のように
あることが心全体を占め
それが人生の動機となって
屈辱を思い出し 復讐しようとします
何代にもわたって
ある人との苦い経験を
思い出して 次に何が起きるか脅えるんです
試験に脅える子供のように
|
|
6:20
それで彼への回答は?
|
|
6:22
と言うと?
|
|
6:23
病気、死、本能的衝動 といった生物学的事実が―
|
|
6:24
どのように心理的問題や 無秩序をもたらすのか?
|
|
6:35
あれこれ考えることによってです 長い目で見れば―
生物学的事実は 重要な問題ではありません
しかし考えるや否や―
あれこれ考えるだけでなく
それに沿ってイメージを作り 記憶をよみがえらせ
未来の感触を予測し
そして深刻な問題になります
はまり込むからです
それでは 安心は手に入りませんが
探さずにはいられない
7:13
考えることの目的は安心です
日常の安心、 技術的な安全のためです
ですから このように考えるのです
“再び苦しまないためには 一体どうしたらいいのか?
”
しかし それは無理な話で
対策はあっても
考えるにつれて 全機能をかき乱し始め―
全精神機能を歪めます
|
|
7:48
確かに 私たちは―
考えることによって 感情などをかき乱しますが
まさか考えない方がいいと 言っているのでは―
ありませんよね?
|
|
8:03
考え方 次第です
我々が このような考え方をするのは
安心感、安全のイメージを得るためです
|
|
8:15
子供の頃 ケガをしたんですが―
それが恐怖心を生み 予測するようになりました
その事故を覚えてなくとも
今後は避けたいんです
|
|
8:29
つまり心は常に 避け方を探していて
思いつきやイメージを探し出し―
“アイツがやったんだ”と
彼を避ける結論に達します
安心のイメージを与えてくれるなら
どんな結論にもしがみつきます
何の根拠もなしに
|
|
8:53
もう少し詳しく
|
|
8:56
そうですね… 誰かが原因で嫌な経験をした場合―
“彼を二度と信じない”という結論に
達するかもしれません
安心を得ることに躍起になっていて
信じるべきではないと 早合点するのです
|
|
9:18
違いますか?
|
|
9:19
しかし あなたを 大事にしてくれる人なら
完全に信じられると
早合点するかもしれません
心は探しているのです
心地よい考え方を
なぜなら 記憶にある感情が―
心地よさを最優先する全機能を
ひどく妨害するからです
|
|
9:45
つまり この時点で関心があるのは
真実よりも安心だと?
|
|
9:51
ええ 平安を邪魔されるので
間違った方法を導入したんです
|
|
9:58
間違った方法?
|
|
10:00
気休めな考えを
見つけることです
|
|
10:04
つまり 思考そのものが ある意味で―
現実に取って代わってしまっていると?
気休めを得るために?
|
|
10:16
はい つまり自己欺瞞です
|
|
10:24
なぜ一次的欲求が安心だと?
|
|
10:28
それが唯一の 一次的欲求かわかりませんが
明らかに 動物にとっては―
安全は重要な欲求でしょう?
また快楽もその一つで
大いに関係してます
|
|
10:47
問題の要点を 『安心』に絞りましょう
確かに それは目標の一つで
人は家や車を 確保したいと思います
財産、銀行の残高などを
しかし手に入れると ある要因が生じます
一つは失うことへの恐れ
もう一つは退屈です
興奮やスリルに対する…
そして この場合 安心が一次的欲求とは
思えません
|
|
11:19
ですから 欲求の一つに過ぎません
例えば あなたの話には
快楽の欲求も含まれてます
|
|
11:29
どうでしょう…
|
|
11:30
興奮は快感ですし
苦痛よりも 快楽や興奮を望むでしょう
|
|
11:37
しかし好奇心にも快楽があり
発見にともなう解放感は
単純な快楽でも
反復的な快楽でも
安心感でもありません
|
|
11:50
我々のあらゆる欲求が―
安心に関与しているとは言ってません
私が言っているのは
全く別なことです
例えば 自然で自由な好奇心は―
楽しいことで この欲求に問題はありません
しかし それに依存して
あれこれ思い悩むなら
それは問題になります
|
|
12:17
それにしても 安心とは何なのでしょうか?
何を意味するのか?
物理的な安全以外に
|
|
12:34
傷つかないことでは?
|
|
12:38
傷つかないこと…
|
|
12:40
全く傷つけられないことです
|
|
12:43
傷つけられないし 傷つけないこと
我々は皆 肉体的に傷つきます
手術、病気などによって
あなたが言うのは
心理的な傷のことですか?
|
|
13:05
はい 疑問があるのですが…
来院する患者は―
心理的な痛みを訴えます
|
|
13:18
それにどう対処されますか?
|
|
13:19
例えば 子供の頃の傷に
|
|
13:21
‐ええ… ‐私は傷ついてます
|
|
13:24
両親によって 学校、カレッジ、大学での出来事によって
|
|
13:26
ええ
|
|
13:34
結婚した妻によって
|
|
13:36
人生の全過程が まるで痛みの連続のようです
|
|
13:44
自己を成立すること、 現実を認識することが
まるで苦痛のように見えます
|
|
13:52
ええ それでどう対処を?
|
|
14:03
自分のことを自覚させます
|
|
14:07
と言いますと?
|
|
14:09
例えば 自分の中で 作り上げてきた観念があるでしょう
“私は劣っている”とか―
“私は被害者だ”とか
そうして 世界を加害者だと
見なしているわけです
私は それを自覚させます
|
|
14:35
しかし それで 心の痛みを取り除くことが?
私は無意識の奥深くに 傷を負っていて―
それが私を妙な行動に走らせ
神経症にし 孤立させます
|
|
14:58
ええ
しかし自覚することで―
人々は回復しているようですし
ある程度は効いてるようです
|
|
15:11
でも このように思いませんか?
“傷つけられないことは可能か?”
|
|
15:23
思います
|
|
15:24
それは誰か他の人を?
それとも己の気持ちを?
|
|
15:29
私は不本意に 人を傷つけることはあるかもしれませんが
故意には傷つけません
|
|
15:37
ええ そんな気はない
|
|
15:39
はい ありません
|
|
15:42
そうかもしれませんが
他人を傷つけないことと―
傷つけられないことに関連が?
傷つけられない最善の方法は―
傷つける側になることです
これが核報復の原理であり
一般的な原則です
|
|
16:04
ええ 確かに
|
|
16:06
故に 傷つけないことと
傷つけられないことの
関連性がわかりません
大抵 傷つける側に回って
安全を得ようとします
|
|
16:18
確かに 王であれサニヤシであれ
己の周りに壁を築いた者であれば―
|
|
16:25
ええ
|
|
16:26
傷つけられません
|
|
16:28
ええ
|
|
16:30
でも子供の頃に傷つき―
|
|
16:32
ええ
|
|
16:34
その傷は残ります 表面的に残るかもしれないし
心の奥に残るかもしれない
さて 心理療法士として どのように他を救いますか?
彼らは深く傷ついていて 無知で―
まったく傷つかない術を探しています
|
|
16:59
その問題には取り組みません
あり得ません
|
|
17:04
なぜですか?
合理的な質問だと思いませんか?
|
|
17:12
今あがっている質問は
問題の核心となる部分です
あなたの質問は 心理療法というより
もっと広いものです
“完全に終止符を打てるのか?
”
“特定の心の痛みだけでなく”
|
|
17:32
では どう進めましょう?
|
|
17:35
痛みが起こる仕組みを 突き止めましょう
そもそも なぜ傷つくのか
最初の段階で
|
|
17:46
その答えは非常に簡単です
気に障ることを言われるからです
|
|
17:57
なぜ気に障るんです?
|
|
18:00
例えば 自分を偉大だと思っていて―
なのに“まぬけ” と言われれば傷つきます
|
|
18:10
何が傷つくのでしょう?
|
|
18:13
自己イメージです
“私は最高の料理人だ”
“偉大な科学者、最高の大工” 何であれ―
私には自己イメージがあり
それに水を差されるから―
傷つくのです
イメージが傷つくのです イメージは私です
|
|
18:37
多くの人は理解できないでしょう
なぜ私がイメージなんです?
イメージが傷つくとは?
存在しないものが傷つくのですか?
|
|
18:49
イメージに多くの感情を 注いできたからです
|
|
18:53
ええ…
|
|
18:55
多くの観念、気持ち、反応を…
それが私、イメージなのです
|
|
19:03
イメージに見えません
現実みたいです
|
|
19:08
大抵の人にとっては非常にリアルで―
|
|
19:12
ええ
|
|
19:13
そのイメージという現実が私なのです
|
|
19:17
ええ
そのイメージは現実ですか?
|
|
19:24
イメージや象徴は 現実ではありません
|
|
19:28
私は象徴に過ぎない?
|
|
19:31
‐恐らく… ‐思い切りましたね
|
|
19:37
疑問が生じたのですが
|
|
19:43
イメージを持たずに いれるでしょうか?
|
|
19:54
待ってください 先程の話が―
まだ終わっていません
|
|
20:00
では それを論じましょう
|
|
20:03
確かに 自分のことを―
考えているときなど
ある程度はイメージでしょうが
それが理に適っているかは わかりません
イメージは誇張されたり
非現実だったりするかもしれません
しかし こういった部分を
取り除いて 妥当な大きさにすれば
残ったものが本物では?
|
|
20:33
“己とは何か” と聞いているんですか?
|
|
20:37
そうだと思います
|
|
20:39
簡単に言えば
あなたとは何か 我々一人一人が
人間とは何なのか
不可欠な質問です
|
|
20:51
はい 避けれない質問です
|
|
20:53
で 『私』とは何でしょう?
私には物理的な形があり 名前があります
‐私はあらゆる教育の結果です ‐経験も…
|
|
21:07
私の経験、私の信仰―
|
|
21:09
私の理想、信条―
私に傷を残した出来事…
|
|
21:22
築いてきたことの結果です
|
|
21:24
あなたが得た技能
|
|
21:25
私の恐怖、私の活動―
|
|
21:26
いわゆる愛情と呼ばれるもの、 私の神―
私の国、私の言葉―
恐怖、快楽、苦痛― すべてが私です
|
|
21:43
はい
|
|
21:45
私の意識なのです
|
|
21:48
‐あなたの無意識も… ‐それが私の全内容なのです
|
|
21:50
なるほど
|
|
21:53
それでもやはり 自分がいる感覚があります
|
|
21:56
反対されるでしょうが
何かが起こっているとき―
実際にそれがあると感じます
|
|
22:11
どういうことです?
|
|
22:15
傷ついたり怒ったりするとき
イメージ以上のものを感じるんです
心の奥深くが傷つけられたような…
|
|
22:29
よくわかりませんが
イメージはそのような…
それは私のイメージなのです
|
|
22:45
ええ しかし…
|
|
22:47
自己イメージがあるとします
“私は偉大な詩人だ、大工だ”
“最高の作家だ”
それ以外にも―
他のイメージがあります
妻に対するイメージ
妻の私に対するイメージ
周りには多くのイメージがあります
自分に対するイメージに加えて
|
|
23:23
つまりイメージの束を 蓄積しているのかも…
|
|
23:25
ええ つまり―
|
|
23:26
あるのはイメージだけだと
|
|
23:30
‐その通り ‐しかし―
|
|
23:31
事実はあるんですか?
|
|
23:34
待ってください
|
|
23:36
事実もあります
例えば いま私は―
座って皆を見ています いま私には―
中心がある感覚があり
それは肉体と関連しています
それには中心があり
私以外の誰でもありません
そして活動の中心である肉体と 関係があるのは
多くの記憶と経験です
話したり 認識するには
|
|
24:08
それらは不可欠です
|
|
24:09
つまりイメージにも 実体があるのでは?
誤ったイメージもあるが
事実もあるように思えます
すべてが錯覚ではなく…
|
|
24:21
つまり あなたは―
我々3人とは全く違うと?
|
|
24:27
居る場所も 肉体も違います
|
|
24:30
そういう意味で違います
|
|
24:31
確かに背丈も違います
|
|
24:32
肌の色も 茶色やら
|
|
24:35
黒、白、ピンク、様々です
|
|
24:36
しかし 他の面においては―
|
|
24:39
同じ言葉でやりとりし
そこには共通点が見られます
身体的レベルでも
酸素、化学物質―
水素原子、酸素原子など
共通点が多々あります
|
|
24:58
では あなたの意識は 我々の意識とは異なりますか?
意識です 体の反応などではなく…
体の条件付けではなく…
あなたの信念―
あなたの恐れ、不安―
絶望 そういったもの全ては?
|
|
25:26
私の意識の中身―
信念、欲望などは 他の人々も持っています
しかし 私が持っている経験―
記憶、欲望の組み合わせは
唯一のものです なぜなら―
様々な要素が入っているからです
|
|
25:46
私のも唯一のものですか?
|
|
25:47
‐彼のも? ‐その通り
|
|
25:48
共通しているなら もはや唯一のものではありません
|
|
25:49
それは矛盾してますね 返答できません
|
|
25:50
なぜ?誰もが唯一無二では?
|
|
25:56
唯一無二であると同時に
|
|
26:01
唯一無二ではないのです
|
|
26:04
でないと意味がなくなります
|
|
26:05
人は誰しも唯一無二で
|
|
26:06
独自の経験、環境要因、 記憶などを持っています
|
|
26:22
それは皆に共通してます
|
|
26:24
ええ けど持ってるものは異なります
|
|
26:28
ええ あなたは英国育ちで
他の方は アメリカやチリで育ちました
私たちは皆 違う経験があり 違う国があり―
景色や山々なども違います
|
|
26:44
ええ
|
|
26:47
しかし 物理的な環境の違いや―
言語の違いや―
経験の違いを別にすれば―
基本的に 根本的に 元来―
我々は苦しみ 死におびえ 不安を抱き―
あれこれ苦痛や葛藤を抱えていて―
それは皆同じなのです
|
|
27:17
それはそうでしょうね
|
|
27:20
ええ 確かに
|
|
27:22
つまり 我々の共通点とは―
表面的なことではなく―
むしろ根本的なことだと
そして共通点のうちでも
悲しみ、苦しみなどは
それほど重要ではなく
本当に重要なのは より高い文明を―
築くことだと思います
|
|
27:48
違いは形態と中身にあるのでは?
我々の中身は皆違います
しかし その形態、構造は 恐らく同じでしょう
|
|
27:59
同じなのは中身だと思います
|
|
28:03
共通の人間性というものが
あることは認めますが―
それが抽象概念や投影ではなく
なぜ実際にあると?
|
|
28:17
なぜなら世界中を回ってみれば 人々が苦しみ―
苦悩し絶望しているのを 目にするからです
孤独で 愛情に飢え 思いやりに餓えているのを
それが基本的な人間の反応であり―
我々の意識の一部なのです
|
|
28:47
ええ
|
|
28:49
つまり あなたは私と何も違いません
あなたは背が高く 生まれた国も違うかもしれません
私は浅黒い肌をしてます しかし川の底は―
川の中身は水です
その川はアジアの川でも ヨーロッパの川でもなく ただの川です
|
|
29:21
ある程度は そうなんでしょうが
どの程度 そうなんでしょう?
|
|
29:26
根本的に 完全にです
|
|
29:31
しかし なぜ人間だけなんです?
全ての人間に共通点がありますが
動物ともまた―
共通点が見られます
多くの共通点が
|
|
29:45
なぜ人間に留まるんです?
|
|
29:46
留まっていません
|
|
29:47
なぜなら私は…
|
|
29:48
『共通』という言葉は好みません
|
|
29:49
我々はそれを 全人類の基盤だと感じています
人間と自然や動物などとの関係
そして我々の意識の中身が―
人間性の基盤なのです
愛は英国的でも 米国的でもありません
憎しみも同様です
苦痛は苦痛に過ぎません
だが我々は苦痛と同化します
“これは私の苦痛である”と。
|
|
30:46
人と違う体験をするからでは?
|
|
30:50
表現や反応は違っても それは基本的に苦痛です
ドイツ的でもアジア的でもなく
英国的でもアルゼンチン的でもなく
それは人間の葛藤です
なぜ我々は 自らを切り離すのでしょうか?
英国人、アルゼンチン人、ユダヤ人
アラブ人、 ヒンズー教徒、イスラム教徒
わかりますか?
非常にばかげていて 部族的です
国家崇拝は部族主義です
なぜ終わらせないのでしょうか?
|
|
31:37
さあ なぜでしょう?
|
|
31:40
なぜなら… 元の問題に戻ってきましたが
国家に自分を 重ね合わせているからです
それが ある種の強さ、 基準、安心を与えてくれます
例えば英国人なら?
つまり この分裂が 戦争の理由の一つです
経済や社交だけでなく
国家主義は実際には
部族主義であり 戦争の原因です
終わらせたほうが 合理的ではありませんか?
|
|
32:28
国家主義のような話では 合理的でしょう
人は国ではありません
|
|
32:35
そこから話をしましょう
|
|
32:36
しかし ある患者は 結婚してると思っていて―
|
|
32:46
自分の妻であると…
もちろん それは彼の妻です
|
|
32:50
そういう話をしてるのでは?
|
|
32:53
いえ いえ
ゆっくりいきましょう
|
|
32:59
はい
|
|
33:02
なぜ より大きなものと 自分を同一化したいのでしょう?
国家や神などと…
|
|
33:14
‐欠乏感があるからです ‐というと?
|
|
33:16
不安がある
|
|
33:18
不安、欠乏、孤独、分離
|
|
33:19
私は自分の周りに壁を築いたので―
|
|
33:29
こういった全てが 私を非常に孤独にしています
|
|
33:31
そして その孤独から抜け出すために
同一化するのです 神、国家、ムッソリーニと
ヒトラーだろうが 宗教の師だろうが構いません
|
|
33:52
では 結婚、仕事、家を持つことも―
|
|
33:56
すべて同一化です
|
|
33:58
なぜ我々は何かと 同一化したがるのか?
|
|
33:59
いえ 根本的な問題は なぜ所属したがるのか?
|
|
34:10
‐所属ですか? ‐所属です
|
|
34:12
または『成る』という意味です
|
|
34:18
つまり 子供の頃からの―
|
|
34:21
全過程です
私は『成る』ように言われます
司祭から司教に 司教から枢機卿に
枢機卿から教皇に
ビジネス界でも同じです
精神世界でも同じです
“私はあれに成らなければ”
|
|
34:48
それで なぜ欠乏感が?
|
|
34:50
なぜ成りたいのか? 『成る』とは何か?
|
|
35:01
その理由は明らかに
不全感でしょう
不十分な状態です
この理由の一つは 我々が不完全な世界に住んでいて
人間関係も不完全だからです
様々な理由から 満足していません
何かになれば 解決できる気が…
|
|
35:24
つまり『あるがままのもの』から 逃避しているのです
|
|
35:30
しかし『あるがままのもの』が
逃避の理由なのです
それに何か問題が…
|
|
35:36
では 例えば 私が暴力的だとします
それで非暴力を考え出しました
私はそれになろうとしています
その間 私は暴力的なままです
つまり私は暴力を 免れたことはないのです
|
|
36:00
でも努力はしています
最後には免れるかも
|
|
36:06
免れるのではなく 私は理解したいのです
暴力の本質とその意味を
いかなる暴力もなしに
人生を送るのは可能か否か
|
|
36:19
しかしそれは より有効な逃避の手段で
逃避の放棄ではありません
あなたが示唆してるのは
通常の逃避では
成功しないので
異なる方法で
非暴力的になろうと…
私は逃避していません
|
|
36:38
変わろうとしている?
|
|
36:40
いいえ 私は暴力的です
|
|
36:42
私は暴力の本質を見たいのです どう生じたのかを
|
|
36:43
何のために?
|
|
36:45
完全に自由になれるか 見るためです
|
|
36:50
それは逃避では?
|
|
36:51
何かから自由になろうと…
|
|
36:55
逃避ではありません
|
|
36:57
『あるがまま』から 回避、逃走、逃げることが逃避です
|
|
36:58
しかし“これが私だ 調べてみよう”
|
|
36:59
そう言うなら それは逃避ではありません
|
|
37:00
なるほど つまり逃避とは―
|
|
37:01
通常 何かから逃げることです
|
|
37:16
例えば 刑務所や両親などから
けど それらは残存したままです
あなたが言っているのは
暴力から逃避して
距離を置くのではなく
暴力を解明、撤廃することです
|
|
37:39
解明です
|
|
37:40
撤廃ではなく 解明です
|
|
37:41
つまり これは 逃避とは異なるわけで
|
|
37:42
逃げているのではないと
|
|
37:51
逃げるというのは… 誰もが逃げます
|
|
37:57
限られた範囲では有効です
|
|
37:59
いいえ…
いわば逃避して サッカー観戦に行くようなものです
家に帰れば逆戻り
私が見たいのは
サッカーではなく 暴力とは何か―
完全に暴力から 自由になれるかどうかです
|
|
38:24
例えば 私がとても悪い社会にいて
他の社会へ亡命するとしたら
ある意味 それは逃避です
|
|
38:34
もちろん
|
|
38:36
それなら逃避は ある程度は有効では?
|
|
38:41
ある程度の非暴力…
ある程度の解放…
私は完全に終止符を 打てるか知りたいのです
それは逃避ではなく 全力をかけることです
|
|
38:56
しかし できると信じなければ―
全力はかけれません
|
|
39:03
私がするのは調査です
私は 人が暴力なしに 暮らせることを知っています
それは生物学的に 極めて珍しいことかもしれませんが
ともかく私たち4人で話し合って―
完全に暴力から 自由になれるかを確かめるのです
回避、抑圧、超越するのではなく
暴力とは何なのか
暴力とは模範、順応の一端です
違いますか?
肉体的な苦痛のことはさておき…
そこには常に 心理的な比較があるのです
それは苦痛、暴力の一端です
比較せずに暮らせますか?
幼い頃から競わされてきました
自分と誰かを
これは善悪の話でなく 比較の話です
|
|
40:16
自分と他人を比較します
|
|
40:19
あなたは機転が利き 頭も良く―
知名度もあり―
世界中が耳を傾けます
私が叫んでも 誰も気にしません
私はあなたの様になりたい
つまり常に比較しているのです 自分より偉大なものと
|
|
40:42
だから何かになりたがる
|
|
40:45
その通り それで 比較せずに生きられるのか?
|
|
40:50
それでは物足りないのでは?
|
|
40:53
まさか! 比較せずに生きるのに?
|
|
40:57
例えば私が―
|
|
41:00
わかりますか? 私が鈍感な理由は―
|
|
41:05
比較するからです
ええ わかります
|
|
41:10
有能なあなたと 自分を比較することによって
|
|
41:15
私は鈍感になります
|
|
41:17
しかし比較しなければ 私は私です
|
|
41:20
しかし他人から 鈍感だと言われるかも…
|
|
41:25
なるほど 人から言われて私は自問します
どういう意味なのか?
彼は私と比較しているのか?
わかりますか?
正反対であると
|
|
41:39
それはじれったいですね 誰かと比べられ―
鈍感だと指摘されて
“鈍感とはどういう意味?”
|
|
41:53
先日 英国で ある男性にこう言われました
“あなたは素晴らしい老人ですが―”
“型にはまっておられる”
そこで私は―
“さあ どうでしょう”
私は自問しました
型にはまっていたくはないので
そこで私は非常に慎重に 一歩一歩調べて―
『型にはまる』という意味を探って
それを観察しました
つまり事実を 観察するということは―
回避や抑圧とは異なります
|
|
42:45
つまり あなたは―
比較せず 観察した
|
|
42:50
はい 型にはまっているのか? 私はそれを観察します
私は英語を話します
イタリア語―
フランス語を話しますが
路面電車のように 心理的に 型にはまっているのでしょうか?
|
|
43:16
意味を理解していないので…
|
|
43:19
いえ 型にはまっているのか それを確かめるんです
とても注意深く 敏感に 用心深く
|
|
43:32
ここで重要なのは 言われたことに対して
反発しないことですね
|
|
43:39
反発しません 真実かもしれませんから
|
|
43:50
そのためには そこに自我があっては
いけないわけですね
|
|
43:56
どうでしょう…
では そこには―
自分についての学びがありますか?
予定外の話ですが…
自分についての 絶え間ない蓄積ではない学びが。
わかりますか?
|
|
44:25
はい
|
|
44:28
私は自分を観察します
|
|
44:30
そして その観察から 何かを学びます
|
|
44:31
その何かは 観察によって―
常に蓄積されますが
それは学びでないと思います
|
|
44:44
ええ それは自分に対する考えです
|
|
44:48
自分に対して思っていること―
集積したことです
|
|
44:53
ええ
|
|
44:57
川の流れのように ついて行かなければ
では元の話に戻りましょう
|
|
45:06
これも関係があるのでは?
そもそもの問題は
無秩序の起源についてですから…
|
|
45:12
無秩序が生じる原因は―
|
|
45:15
他人が私に指摘することが
自己イメージと合わないからです
|
|
45:25
相手が正しいかも
|
|
45:27
ええ 率直に見る必要があります
|
|
45:30
その通りです
|
|
45:32
これはどうですか?
誰かに指摘されて
こう反応します “確かにその通りだが―”
“だから何だ?”と。
|
|
45:46
それは単なる盲従です
|
|
45:47
いいえ 事実を受け入れたうえで
“構うものか”
何が悪いんです?
|
|
45:55
例えばヒンズー教に はまっているなら
戦争に貢献しています
|
|
46:03
しかし誰もが型にはまっています
それが人間の性質では?
|
|
46:10
ほら まさしくそこです “人間の性質”
疑問に思います
それが人間の性質なら
もう変えてしまいましょう!
|
|
46:22
しかしそれが可能だと―
どうやって信じたら?
型にはまってないと
信じている人は
己を欺いているのでは?
|
|
46:34
己を欺く? では私は自問します
私は自分を 欺いているのだろうか?
偽善者になりたくありません
|
|
46:46
偽善者ではなく悲観論者かも
偽善者に代わるもの
それは悲観論者です
|
|
46:54
私はどちらでもありません
“私は型にはまっているだろうか?
”
一日中 観察します
|
|
47:04
でも もし結果が“イエス”なら
それを受け入れ “構わない”という手もある
|
|
47:14
それがお望みでしたら どうぞ
でも私は望みません
|
|
47:22
心理治療に来る患者にも
同様のことが起きています
患者は悩みから 解放されることを望んでいて
“抜け出したい”と言います
その一方 不安になるので
問題を直視するのを嫌がります
|
|
47:43
なるほど… では 最初の問題に戻りますが―
この世は無秩序であり 人間も無秩序に陥っていて
そのことを話してきました
無秩序から解放された人生を 送ることは可能でしょうか?
それが根本的な問題です
人生において 分裂を生じさせる行為がある限り―
例えば ヒンズー教、アラブ人―
仏教徒、イスラム教徒―
英国人、アルゼンチン人―
対立、戦争が生じます
息子が殺されます 何のために?
|
|
48:39
仲間や職業などと同一化する限り
苦痛が伴うということですね
|
|
48:46
その通りです
|
|
48:47
では 同一化せずに 責任を持つことはできますか?
|
|
48:48
その場合 仕事に行くでしょうか?
|
|
48:56
しかし妻に対して責任があります
|
|
48:59
彼女の世話をし 彼女を思いやる責任があり―
彼女は夫を思いやります 責任とは秩序です
しかし我々は 孤立することによって
完全に無責任になりました
|
|
49:27
我々は 決まりきった型を持つことで
責任問題に対処し―
|
|
49:32
その中に留まります
|
|
49:33
責任とは秩序であるという 事実を理解すれば―
|
|
49:40
家を清潔に保つ責任があります
我々は皆 この地球に住んでいます
英国の地球でも フランスや ドイツの地球でもありません
だが我々は分裂しました
それが安全だと思ったからです
|
|
50:14
安定と安全があると。
|
|
50:16
まったく安全ではありません
|
|
50:21
よくわからないのですが―
仕事や家族は 安全を保障してくれるものでは?
|
|
50:29
失うかも
|
|
50:31
問題が尽きませんね
|
|
50:32
多くの失業者が存在します
英国では300万人です
|
|
50:39
仕事がなくても生きられますが
自尊心を持つ必要が…
|
|
50:45
自尊心とは?
|
|
50:47
つまり同一化する場所が
どこかに必要なのです
|
|
50:52
なぜ何かと 同一化したいと思う必要が?
それはすぐに分離を生みます
|
|
51:04
安定を得るためです
|
|
51:08
分離が安定をもたらしますか?
|
|
51:12
安心感を与えてくれます
|
|
51:15
本当にそうですか?
我々は過去5千年間に渡り 戦争をしてきました
約5千回もです それが安定ですか?
|
|
51:34
いいえ
|
|
51:35
一体 我々は…
何が悪いのでしょうか?
|
|
51:41
では このことを調べてみましょう
この問題の原因は―
何かに同一化することです
次から次へと
|
|
51:52
その通り それは分離を生み出します
|
|
51:56
しかし 型にはまっている人物の話では
同一化せずに 事実かどうか観察すると
あなたは言いました
|
|
52:07
その通り
|
|
52:08
つまり同一化されずに
自由に観察できる何かがあるのです
|
|
52:15
論点がずれてきています
なぜ同一化したいのでしょう?
恐らく 安全を望んでいるからです
安心、保護を
その感覚が強さを与えてくれます
|
|
52:37
強さ、目的、方針を
|
|
52:40
強さをくれます
|
|
52:41
しかし同一化は錯覚ではありません
|
|
52:43
動物界を見れば 生物学的な事実です
シカも鳥もハチも 群れを成していて
巣と同一化しています
|
|
52:58
しかしハチは自殺しません 動物は自殺しません
|
|
53:04
でも他のハチを殺しますよ
自殺はしませんが…
|
|
53:10
人間は自殺します
|
|
53:12
とにかくハチは 他のハチと戦います
|
|
53:16
もちろん知っています
|
|
53:19
つまり動物界であっても 社会生活を営む動物は
群れと同一化します
それは我々も同じです
|
|
53:29
待ってください
我々は国と同一化します インド―
中国、ドイツ… それは我々に安全をくれますか?
|
|
53:43
ある程度はくれます
|
|
53:44
そして家族と同一化することは
|
|
53:45
責任についてのあらゆる問題と
関係があります
家族と同一化するなら
家族に対して義務感を抱き―
妹が侮辱されていれば 駆けつけて
侮辱した奴を脅します
|
|
54:07
幸運にも妹はいません
|
|
54:10
つまり もし自分の家族を守るなら―
|
|
54:13
家族への侮辱は―
自分への侮辱です
|
|
54:24
もちろん
|
|
54:25
そこには相互義務があり
私が病気なら 家族が世話をし
警察に逮捕されても
救ってくれます
安全を与えてくれます
|
|
54:37
確かに
|
|
54:39
だから同一化するのでは?
|
|
54:41
しかし 家族から さらに地域へと拡大して
地域から国家となると
それは分裂への大きな過程です
英国人、ドイツ人… そしてお互いに争います
まったく本当にばからしい!
|
|
55:04
いえ そんなことは…
|
|
55:08
ある程度は有効で…
それは無益な殺し合いです
|
|
55:14
まだ殺し合ってはいませんし
かつてないほど 人間がいることから
その方法は 殺し合いとは
無縁という段階まで
やってきました
実際にかつてない程の 人口を抱えてます
|
|
55:33
だから戦争をして一掃しろと?
|
|
55:37
まさか
ともかく有効である局面があり
ある程度の安全もある
|
|
55:46
ええ あるレベルにおいて 同一化は―
ある程度 重要です
しかし高いレベルでは
それは危険なことなのです
皆が言うように
兄弟がいれば世話を焼きますが…
|
|
56:08
次第に拡大するので
境界線が難しいですね
|
|
56:13
‐その通りです ‐足を滑らせます
|
|
56:15
だから反対しているのです
|
|
56:16
では どこで線を引きますか?
|
|
56:19
兄弟がいれば 同族がいて
一族や階級があります
|
|
56:26
そうです!拡大して!
そして“私はアルゼンチン人だ”
“英国人だ、フランス人だ”と言って
経済的に 社会的に 文化的に 殺し合うのです
非常にばかげています!
|
|
56:44
では どこに一線を?
もし国民国家が間違いなら
部族、階級、家族に対して
|
|
56:54
矛盾が生じます
我々は人間として―
世界に責任があります
人間ですから
そして世界では ひどい分裂が起きています
私はヒンズー教徒にも
キリスト教徒にも 仏教徒にもなりません
多くの人がそうなれば
何かが始まるはずです
|
|
57:26
つまり問題が起きるのは
自衛の方法を間違えて
同一化するからだと?
|
|
57:35
ええ それは分離です
そこに安全はありません
故に無秩序なのです
|